「焼酎=芋の香りが強い」「クセが強い」「おじさんのお酒」といったイメージは、ここ数年で大きく変わりつつあります。
いま注目されているのは、フルーツのような華やかな香りをまとった「香り系焼酎」。
柑橘やマスカット、ライチを思わせるその香りは、焼酎の世界にまるでワインやジンのような新しい風を吹き込んでいます。
焼酎の新しい時代を感じさせるこのトレンドは、飲食店さまにとってもお客様の心をつかむ新しい提案の武器になり得ます。
近年、焼酎市場全体は右肩下がりが続いています。
背景には、飲酒人口の高齢化や若者のアルコール離れといった社会変化があります。
この状況を打開しようと、各蔵元が挑戦しているのが「香り」による差別化です。
従来の「原料の個性」を大切にしながらも、“フルーティーで軽やか”な焼酎を生み出すことで、
これまで焼酎に馴染みのなかった若年層・女性層を取り込もうという動きが加速しています。
さらに、ソーダ割りやカクテルスタイルでも香りが引き立つため、
“ハイボール感覚で楽しめる焼酎”として支持が広がっています。
このブームの背景には、原料・酵母・蒸留技術の進化があります。
なかでも、モノテルペンアルコールを多く含むサツマイモ品種「ジョイホワイト」の登場は大きな転機となりました。
ライチや白ぶどうのような華やかでフルーティーな香りを生み出すこの品種は、濵田酒造の「DAIYAME」や霧島酒造の「KIRISHIMA no.8」などにも使われています。
さらに、香気成分を逃さず繊細な香りを閉じ込める「減圧蒸留」の技術、華やかな香りを引き出す新酵母の開発、そして複数の原酒を絶妙に組み合わせる“アッサンブラージュ”と呼ばれるブレンド技法など――。
こうした蔵元たちの研究と挑戦の積み重ねこそが、香り系焼酎の香り豊かな世界を支えています。
つまり、香り系焼酎は単なるカジュアル化やトレンドではなく、職人たちの技と探求心が生み出した結晶なのです。

“ライチの香りがする芋焼酎”として2018年に登場。
その斬新な香りと完成度の高さで瞬く間に話題となり、国際コンペでも高評価を獲得。
いまや“香り系焼酎”を代表する存在です。

“ボタニカルが香る麦焼酎”として2022年に誕生。
スパイスのような刺激と柑橘の爽やかさが特徴の「Spicy & Citrus」、
トロピカルな果実香とホップ由来のほろ苦さが調和する「Bitter & Tropical」。
いずれも麦焼酎の新たな可能性を切り拓く革新的な香りで、
“次世代の香り系焼酎”として注目を集めています。

“すっと香って、するりと飲める”をコンセプトに2023年に登場。
米焼酎ならではのやさしい香りと澄んだ味わいが特徴で、
フローラルで繊細な香りが口の中にふんわりと広がります。
香り系焼酎の流れを踏まえながらも、霧島酒造らしい上品で繊細な仕上がりで、
幅広い層に新しい焼酎の楽しみ方を提案しています。

もちろんこれらだけではありません。そのほかにも
★“飲み方で香りが変わる”新感覚の全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」‐宝酒造
★香気成分の異なる複数の芋を組み合わせたブレンド焼酎「碧酔譚(へきすいたん)」-田崎酒造
★南国果実のようなトロピカルな香りが広がる芋焼酎「TROPICAL TIGER(トロピカルタイガー)」‐小正醸造 などなど
焼酎の可能性は、いま、香りとともに広がり続けています。
香り系焼酎の登場によって、焼酎が再び多くの人に“選ばれるお酒”になりつつあります。
初めて焼酎に触れる人にとっても、“親しみやすいお酒”としてのきっかけをつくっているからです。
最近はコンビニやスーパーでも“焼酎ハイボール缶”をたくさん見かけるようになりました。
大きくて重さのある瓶よりも買いやすく、気軽に試せる形で焼酎が身近になっています。
とくに女性や若い世代にとって、焼酎を瓶で買うのは少しハードルが高いもの。
そんな中で、手に取りやすい缶スタイルや香りを楽しむタイプの商品が、焼酎の新しい入り口になっています。
こうした流れを後押ししているのが、香り系焼酎の存在。
香りを楽しむスタイルが広がることで、焼酎が“重いお酒”から“気軽に楽しめるお酒”へと変わりつつあります。

「いつもの一杯」しか飲まれない常連様に、
“香りで驚かせる一杯”を提案してみませんか?
小さな変化が、会話とリピートにつながります。
「焼酎は飲まない」という若年層も、フルーティーな香りなら手に取りやすく、
ハイボールスタイルなら、普段から飲み慣れているかもしれません。
「香り系焼酎あります」と掲げるだけで話題に。
写真映えするボトルデザインも多く、投稿・拡散のきっかけにもなります。
グラスにも、ぜひひと工夫を。
香りを引き立てるグラスに変えるだけで、驚くほど印象が変わります。
丸みのあるグラスなら香りがふわりと立ちのぼり、
柄入りのグラスなら見た目にも華やか。
そんな小さな変化が、焼酎の楽しみをぐっと広げてくれます。

焼酎市場の中で、新しい風を吹き込んだ「香り系焼酎」。
それは単なるトレンドではなく、焼酎の未来へつながる新たな可能性です。
お客様に“香りの感動”を届ける一杯を。
そして、その一杯が明日への活力になりますように――
香り系焼酎を、ぜひお店の新しい仲間に迎えてみてください(^^♪
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飲食は明日への活力
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