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酒屋のブログ

「無断キャンセルが飲食店を苦しめる」―現場の声とわたしたちができる支援とは

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「また今夜も来なかった」

「キャンセルの連絡すらない」

これはある飲食店様の店主の言葉です。

食材を仕入れ、スタッフを手配し、心を込めて準備した「予約」が、ただの空席になってしまう。

無断キャンセル――
それはニュースになりにくいけれど、確実に、静かに、飲食店様の経営を蝕む大きな問題です。

そして私たち業務用酒販店も、この影響を受ける取引先様と日々向き合っています。

数字で見る、飲食店様の見えない被害


年間2,000億円――

これは日本国内の飲食店が「無断キャンセル」で受けているとされる被害額とされています。(※)
※経済産業省が2018年11月1日に発表した「No-show対策レポート」に基づく数値。
※現在、当該ページは公式サイト上では削除または非公開となっています。

過去には、ニュースで取り上げられたこんな被害事例があります

  • 東京都内の和食店では、40名の団体予約が無断キャンセルに。
    食材費・人件費合わせて約20万円の損失が発生し、店主がSNSで発信したことで全国ニュースに。

  • 京都市の京料理店では、13名のふぐコースが偽名で予約され、当日無断キャンセル。
    調査の結果、悪意のあるイタズラだったことが判明し、「偽計業務妨害容疑」で逮捕者が出る事件に発展。

  • 大阪の焼肉店では、週末の予約3組18名が連続でドタキャン。
    売上と仕入れのロスだけでなく、常連客の予約を断っていたことによる信頼損失も大きかったと報道されました。

これらのようにメディアに取り上げられるケースは一部に過ぎません。
実際には、数人規模のキャンセルや直前の変更といったニュースにならない被害が、日々全国のお店で起きています。

「たった1組」のキャンセルでも、食材や仕込み、人件費のロスは確実に発生します。
それが1週間に数回、1ヶ月で十数件となれば、小さな損失が積み重なり、経営を圧迫する大きな負担となっていくのです。

だからこそ、対策と仕組み作りが不可欠です。

飲食店様がとるべき「予約キャンセル」対策とは


無断キャンセルやドタキャンによる被害を防ぐには、ただ嘆くだけでなく、事前に“仕組み”として対策を講じることが重要です。
実際の現場で導入が進む代表的な対策を紹介します。

① キャンセルポリシーの明示

まず基本となるのは、キャンセル規定を事前に明確に伝えることです。
「いつまでのキャンセルであれば無料なのか」
「当日のキャンセルにはどの程度の料金が発生するのか」
といったルールを、事前にお客様にわかりやすく伝えておくことが、トラブル防止の第一歩となります。

Webサイトや予約ページには、例えば

「ご予約当日のキャンセルは、ご予約料金の100%を申し受けます」
といった具体的な文言を掲載しておくことで、無断キャンセルの抑止効果が期待できます。

また、電話での予約受付時にも、同様の内容を口頭で丁寧に伝えることも重要です。

「〇日前までにご連絡いただければキャンセル料はかかりません」
「当日のキャンセルは料金が発生いたします」
といった一言を添えることで、認識のズレや“言った・言わない”のトラブルを未然に防ぐことができますが…

こうした背景もあり、予約内容やキャンセル規定が見える化され、履歴として残るオンライン予約のニーズが高まっているのも事実です。

オンライン予約では、「キャンセルポリシーに同意する」チェックボックスを設けることで、お客様の事前同意を確実に得る仕組みも導入しやすくなっています。

規定の見える化と、履歴が残る仕組みづくり。この2つが、飲食店とお客様双方にとって安心できる予約環境を築くカギとなります。

② 予約前日の確認連絡

予約の前日に、お客様へ「ご予約の確認」をお伝えすることは、無断キャンセルや連絡なしの来店忘れを防ぐうえで、非常に効果的な方法です。

「明日〇時に、〇名様でご予約いただいております。ご予定に変更はございませんか?」
といった一言を、電話やメッセージでお伝えすることで、お客様自身も予約を思い出すきっかけとなり、トラブルを未然に防ぐことができます。

もちろん、お店にとっては手間のかかる作業ではありますが、
「前日にご確認の連絡を差し上げます」
とあらかじめ伝えておけば、お客様の印象も良く、丁寧なお店という信頼感につながります。

ほんの少しの手間と工夫が料理を美味しくするのと同じように、
このひと手間を惜しまないことが、お店の信頼となり、「また来たい」と思っていただけるきっかけになります。

③ SNSや店内での「伝え方を工夫する」

SNSを活用している飲食店様であれば、InstagramやX(旧Twitter)などで、
「ご予約に関するお願い」をわかりやすく丁寧に伝えることも大切な取り組みのひとつです。

「当日のキャンセルはご遠慮ください」
「ご連絡だけでもいただけると助かります」など、
フォロワーに向けた発信を通じて、 ”予約” はお店との ”約束” であることを伝えるきっかけにもなります。

SNSでは、キャンセルによる被害の実情だけが投稿・拡散されるのを見かけることがあります。
ですが、本当に伝えたいのは、「困っている」という気持ちを理解していただくことなのではないでしょうか。

「お客様を責める」のではなく、お店の想いや背景を丁寧に伝えることで、お店のファンとなって応援してくださる方が増えることのほうが、これからの営業にとってずっと大きな力になるはずです。

④ 事前決済・予約金制度の導入

少しハードルは上がってしまいますが、無断キャンセルやドタキャンのリスクを減らすために、事前決済や予約金を導入するお店も増えています。
特に、コース料理や高価格帯のメニュー、団体予約など、キャンセルによる損失が大きくなる場面では、非常に効果的な対策となります。

たとえば、

「予約時に1人あたり1,000円だけ事前にお預かりします」
といった形でも、キャンセルに対する心理的なハードルが高まり、軽い気持ちでの予約を防ぐ抑止力になります。

酒販店としてできる対応・支援


無断キャンセルのリスクと日々向き合うのは、飲食店様だけではありません。
ドタキャンによる悔しい思いをされる飲食店様の声は、私たち業務用酒販店にも届いています。
私たちができることは限られているかもしれませんが、「単なる仕入れ以上の価値を提供できるパートナー」としてできる支援があると信じています。

① 納品スケジュールの柔軟対応
こうしたリスクに備えて、納品のタイミングや数量を柔軟に対応できる体制づくりを私たちも心がけています。
私たち自身もネット注文を取り入れており、必要なときに必要な分だけ発注いただける仕組みを整えています。

「予約が確定してから追加で発注したい」
「急な変更に応じて納品日をずらしたい」といったご要望にも、可能な限り対応できるよう努めています。

② 少ロット・代替品のご提案
少量から仕入れが可能な商品や、代替商品などをご提案しています。
あらゆる商材を取り扱う酒販店だからこそ、現場の状況に応じた柔軟なご提案が可能です。
急な変更があった際には、価格帯や容量が近いものなど、できるだけご希望に沿った代替品をご提案できる場合もあります。お気軽にご相談ください。

③ 事例や対策の情報共有
私たちは、他の飲食店様が実際に取り組まれているキャンセル対策の工夫や成功事例など、現場で役立つリアルな情報も積極的に共有可能です。

「他のお店はどんな対応をしているの?」
「自分の店でも取り入れられるかな?」といったご相談も、ぜひお気軽にお寄せください。
日々の営業に少しでもヒントになるような情報を、商品のお届けと一緒にお伝えできればと思っています。

泣き寝入りするしかないのか?

「飲食店はそういうリスクもある業種だから…」
そう思われがちですが、決して泣き寝入りする必要はありません。
近年では業界全体でキャンセル対策の声が高まり、実際に導入するお店も増えています。

キャンセルを未然に防ぎ、キャンセル料の回収もスムーズに。

③ SNSや店内での「啓発」

ドタキャンの実害を発信することで、お客様のモラルを喚起する動きも広がっています。
「飲食店は準備に時間もコストもかけている」――その現実を伝えることも、大切な対策のひとつです。

最後に──お店とお客様、そして私たち酒販店も


私たちも、日々仕入れ・納品において飲食店様と向き合っている立場として、
「予約があるから今週は多めに仕入れる」
「宴会対応があるからこの銘柄を早めに納品してほしい」
といった声にお応えしてきました。

だからこそ、突然のキャンセルによる損失がどれほどの痛手になるか、痛感しています。

ですが、ほんの少しの工夫や準備で、防げるケースがあるのも事実です。

キャンセルポリシーをきちんと伝えること。
予約の前日にひと声かけること。
少しだけでも予約金をお預かりすること。
SNSなどで、お店の想いを丁寧に伝えること。

「予約はお店との約束」であることを、気持ちよく伝えていける仕組みづくりが、
安心して営業を続けるための第一歩になるはずです。

私たち中島屋酒店もまた、その取り組みに寄り添い、支える存在でありたいと思っています。

納品スケジュールの調整や、少量での仕入れ対応、代替品のご提案、
そして「他のお店ではこんな工夫をされていますよ」というちょっとした情報まで。

「ただお酒を届けるだけの存在」ではなく、
毎日の営業を一緒に支えていける、そんなパートナーでありたいと考えています。
小さな行動かもしれませんが、飲食業界が前向きに回るために、酒屋としてできる支援を続けていきます。

どんな小さなことでも構いません。

まずはお気軽にご相談ください。



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